研究一覧

感染症研究

感染症研究について

非結核性抗酸菌をはじめとした感染症について、研究しています。結核菌は、ご存知の方が多いように伝染性を持つ細菌です。発生患者数、死亡者数とも減少傾向ですが、まだまだ恐ろしい病気です。非結核性とは、まさに結核に非ずという意味で、伝染性を欠如した抗酸菌群の総称です(ただし、らい菌は除く)。これらは呼吸器感染を中心とした慢性感染症を引き起こします。結核は怖い病気ですが、治療法が確立し、治療成績も98%が完治するなど、良好な経過を取る疾病になりつつあります。ところが、非結核性抗酸菌症の中で呼吸器感染症を起こす代表的な菌、Mycobacterium avium-complexは、初期治療成績は良くとも必ず再発し、治療により完治する率は30%以下です。幸いにも進行が寛徐ですが、約一割の方は急速に進行していきます。治療薬剤はなく、進行していく経過を、ただ手を拱いて見ておくだけという、呼吸器内科医師にとって非常に情けない病気です。この状況を何とかしようというのが、研究の動機です。まず、この発症メカニズムを検討することにより、治療に結びつくのではないかと考えています。基礎研究とともに臨床研究を進めており、臨床に役立つ情報を一つでも提供できればと思っています。慶応大学などとともに共同研究を行っています。また、福岡県での前向きレジストリも構築しています。また、基礎研究では微生物免疫学教室と共同で実験をおこなっています。西日本で数少ない研究もできる施設です。 非結核性抗酸菌症以外の感染症(ウイルス、市中肺炎、院内肺炎、誤嚥性肺炎など)にも力をいれています。COVID-19診療にも積極的に寄与し、院内感染制御部、感染症内科、総合診療部などと連携の上、診療にあたっています。これらも院外の施設、感染研、長崎大学、慶応大学とも共同研究を開始しています。 呼吸器感染症研究を開始してみたいと思われている方は、是非声をかけてください。

肺癌研究

肺癌研究について

 現在、がんは日本人にとって非常に身近な病気であり、近年の統計では、2人に1人が一度はがんに罹患すると言われています。日本における肺がん罹患数は男性で2位、女性で4位、男女の合計では3位となっています(近年やや減少傾向)。また、2018年の各臓器部位別がんにおける肺がん死亡者数でみると、男性が5万3002人で1位、女性は2万1118人で大腸がんに次いで2位と非常に多く、5年間生存できる割合は20%程度と低く治療が困難な予後不良な疾患であります。当院もH20年に地域がん診療連携拠点病院に指定され、ますますがん治療に重点が置かれている現状です。 現時点で進行期肺癌の予後を改善するために、各々の患者さんの肺がんの組織型や全身状態に応じて、全身治療としての化学療法(様々な殺細胞性抗癌剤や分子標的薬)が行われています。さらに、2015年以降、進行肺癌の標準治療として複数の免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)が登場し、一部の患者さんでは長期的な生存症例も期待できるようになっております。このように、近年目覚ましい発展を遂げている肺がん治療ですが、実臨床ではより効果的かつ安全な治療法を確立するためにさらなるエビデンス構築が必要です。当科も九州大学を核とする全九州的な肺癌臨床研究機構LOGIK(Lung Oncology Group In Kyushu, Japan)や西日本全体の臨床試験をリードする西日本がん研究機構WJOG(West Japan Oncology Group)に参加し積極的に臨床試験を進めております。また、上記免疫療法等の登場により年々予後の改善を認めるもののどのような患者さんが複合免疫療法(殺細胞性抗癌剤+免疫チェックポイント阻害剤)で長期的恩恵を受けるのかは不明であり、当科では免疫療法の効果予測バイオマーカーを探索する観察研究を実施しております。また、その他の進行肺がん臨床における喫緊の課題として、標準治療耐性となった患者さんに対する新たな治療法の開発が挙げられます。近年、新たな癌治療モダリティとして、癌細胞において特異的に感染後増幅し、癌細胞を破壊する腫瘍溶解性ウイルス療法が注目を集めています(欧米を中心に数十の治験が進行中)。我々は固形癌で発現量の高いICAM-Ⅰ分子を介して肺がん細胞を破壊するヒトへの病原性の低いエンテロウイルス(コクサッキーウイルス)を用いた腫瘍溶解性ウイルス研究を行っております(特許取得済)。実際に肺癌を含む多種固形癌の腫瘍増殖抑制効果を担癌マウスモデルで実証し、難治性疾患である悪性胸膜中皮腫においても優れた抗腫瘍効果が認められました(悪性中皮腫:九州大学との共同研究)。さらに、2021年からは東京大学、九州大学との共同研究として新たな治療モダリティの開発(肺がんに対する新規抗体薬物複合体)を開始する予定です。肺がん治療は前述のように日進月歩であり、今後も新たな免疫療法や分子標的薬が続々と臨床現場に登場することが予想されております。腫瘍生物学及び免疫学の2つの視点からの考察が必要となる複雑な領域となりますが、患者さん自身の免疫力をうまく回復させることで、単なる延命ではなく治癒(あるいは癌との共生)に至らせることも夢ではない、臨床及び研究においてやりがいのある最もエキサイティングな疾患のひとつとなるでしょう。是非この困難な病気を克服すべく、ともに戦い切磋琢磨できる先生方の入局を心より歓迎いたします。学生、他分野専門医師、non-MD研究者(薬学部、工学部等)に関わらず肺がん研究にご興味のある方はいつでもお声かけ頂けますと幸いです(hinoue@fukuoka-u.ac.jp)。

間質性肺炎研究

間質性肺炎研究について

2005年から4年間、福岡大学医学部病理学教室において、主に間質性肺炎をテーマとした研究に従事しました。 間質性肺炎、特に通常型間質性肺炎 (usual interstitial pneumonia; UIP)の病理組織学的特徴の一つに線維芽細胞増生巣 (fibroblastic foci; FF)が知られています。FFは線維化を進める場であり、その多寡が予後の悪化に寄与するとされています。間質性肺炎における線維芽細胞の起源は、最近の研究から複数存在することが明らかにされており、すなわち、①もともと肺局所に存在した間質の線維芽細胞、②末梢循環血液中の線維細胞、③骨髄由来の線維芽細胞前駆細胞、④肺上皮細胞からの上皮-間葉移行 (Epithelial- mesenchymal transition; EMT)によるもの、が挙げられています。特にこれらの中の上皮-間葉移行に着目し、間質性肺炎の生検標本を題材に調べたところ、免疫組織学的にEMTの線維化への寄与が観察されました。間質性肺炎は有効な治療法がないのが現状ですが、線維細胞の細胞起源を明らかにすることは、新たな治療戦略の発見につながる可能性もあります。 また、FFと呼吸機能の関連に関する研究も進めており、FFの多い症例では呼吸機能が悪いという有意な相関を示す結果も得られています。組織学的にUIPと非特異性間質性肺炎 (nonspecific interstitial pneumonia; NSIP)の鑑別が困難な症例が非常に多いのが現実であり、間質性肺炎の組織診断に関する診断医間の一致性は以前から問題として指摘されていました。今後はこの両者の分類を問わず、FFの広がりを組織学的に観察することが予後予測に重要となるかもしれません。 一方治療に関しては、抗線維化薬であるピルフェニドンが2009年に新薬として発売され、当院においても特発性肺線維症 (idiopathic interstitial pneumonia; IPF)に対して積極的に投薬し、呼吸機能の変遷を追っています。元来IPFは非常に予後の悪い疾患ですが、ピルフェニドンを投与することにより、呼吸機能の悪化が控えられ、実際に有効性を示す症例もあります。特に肺機能が保たれている、比較的発症早期と思われる症例において有効性が高い傾向が分かりました。 間質性肺炎はその病因解明、診断、治療などにおいて、未だに課題の多い分野であると思います。上記のような研究課題を紹介致しましたが、少しでも興味をお持ちの方がございましたら、お気軽に声をかけて頂ければ幸いです。

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