診療内容

入院病床数は31床で、本館5階西病棟20床、5階南病棟4床、6階西病棟7床を有している。入院患者の内訳は肺癌が最も多く、呼吸器感染症、びまん性肺疾患(特発性間質性肺炎・サルコイドーシス・膠原病関連肺疾患など)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)・気管支喘息の増悪、睡眠時無呼吸症候群(検査入院)、その他(胸水、喀血など)と多岐にわたっている。 肺癌は2018年の日本人癌死因の男性1位・女性2位となっており、今後も増加が予想される。当科での入院患者における肺癌の割合は、睡眠時無呼吸症候群の検査入院を除くと全体の半数以上を占める。肺癌患者は増加の一途をたどっているが、外来化学療法を積極的に取り入れ、入院待ち期間と在院日数の短縮に取り組んでいる。肺癌の治療は、症例毎に最新の国内外の成績を取り入れたディスカッションに基づいて行っている。呼吸器外科、放射線科と毎週月曜日に合同カンファレンスを開催し、集学的治療を行う体制が整えられている。多施設共同臨床試験にも積極的に参加している。また患者教育にも取り組んでいる。 呼吸器感染症による入院も約2割を占めている。感染症治療はガイドラインをベースに行っている。市中肺炎、院内肺炎、免疫力低下によるニューモシスチス肺炎、肺真菌症、非結核性抗酸菌症など、他院から重症例の紹介も多く、基礎疾患の治療や病原微生物の同定を行いながら診療している。 間質性肺炎をはじめとするびまん性肺疾患は周辺施設からの紹介が増加している。画像から鑑別診断を絞り、診断のための気管支肺胞洗浄や気管支鏡下肺生検、呼吸器外科の協力のもと胸腔鏡下肺生検を積極的に行い、正確な診断と治療を行っている。 COPDや気管支喘息は吸入療法(ステロイド、β2刺激薬、抗コリン薬)の普及とともに入院が必要な症例が大幅に減少したが、外来では大きなウェイトを占めている。COPDは肺癌と同様に喫煙に関係して有病率が増加しており、喘息患者数は成人・小児共にここ10年で約2~3倍に増加したと言われている。睡眠時無呼吸症候群は年間約80例の検査入院を行っている。 また重要な診療業務の1つとして、呼吸器外科や関連スタッフの協力のもと肺移植の待機患者および移植後患者の評価・治療を行っており、毎週肺移植カンファレンスに参加している。 なお気管支鏡検査においては、従来の鉗子生検や肺胞洗浄に加えて、超音波気管支鏡下針生検(EBUS-TBNA)、ガイドシース併用超音波気管支腔内断層法(EBUS-GS)といったエコーを用いた気管支鏡検査・生検、組織を凍結採取することにより従来の気管支鏡下生検より大きな組織採取が可能なクライオバイオプシー、気管支喘息に対しての治療である気管支サーモプラスティーといった最新の検査治療を導入し向上に取り組んでいる。

今後の課題と展望

課題

今後高齢人口が増加するとともに、肺癌、呼吸器感染症、COPDなどの呼吸器疾患が増加することが見込まれている。今でも呼吸器疾患による入院患者は多いものの、それに見合う呼吸器専門医が充足しておらず、マンパワー不足と言わざるを得ない。緊急を要する入院も増加することが予想され、このマンパワー不足が深刻になることが危惧されている。また革新的といえる診療内容の進歩がみられていない分野であり、今後の新規検査法や治療法の開発が課題である。

展望

1.人材確保・育成 ●学生・研修医が魅力を感じる教室づくり ●上手な勧誘活動 ●関連施設との密接な交流 2.臨床 ●入院・外来患者数の確保:周辺地域との交流 ●治験、臨床試験の積極実施 ●最新医療への取り組み(クライオバイオプシー、気管支サーモプラスティーなど) 3.研究 ●個別研究の紙面発表(学会発表で終わらせない) ●基礎研究(感染症、肺癌、びまん性肺疾患) 上記を目標に地域病院との連携の強化および呼吸器内科医の育成に努めていく。超音波気管支鏡、内科的胸腔鏡などの検査や、新規の分子標的薬や抗線維化薬の使用を積極的に取り入れ、診療レベルをアップさせていく。また、呼吸器疾患の最大の原因とされる禁煙に関する教育、指導、啓発活動の充実に努めていく。

その他

高度先進医療

呼吸器外科と協力し、肺移植待機患者および肺移植後患者の評価・治療を行っている。

地域活動

①城南・早良・西区胸部画像勉強会 ②福岡呼吸器相談室の開催 活動内容 ①城南区・早良区・西区の開業医の先生方と一緒に、当科に紹介していただいた患者の診断、治療について検討する。また当科スタッフによるミニレクチャーを行っている。 ②近隣の呼吸器内科医を中心とした勉強会で、胸部放射線科医を交えた症例検討、および院内外の講師によるテーマに則した講演形式で行っている。 活動実績 計6回/年、開業医の先生方の参加は平均約10名。当日のコンサルテーションにも応じている。

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